東京は、公共の交通機関が発達していて、車がなくても全く問題はありません。
が、50歳も半ばになり、一度は自分の車を持ってみたいと思ってました。
死ぬまでにもう一度乗たい車は何?
と訊ねられれば、それは父が乗っていたのと同じ、白いビートルでした。
1.スチールダッシュボード。
2.フェンダーの上にウインカー。
3.安全のためにヘッドレスト付き。
4.ストック車高。
5.鉄ホイール。
とにかく、オリジナルのまま!
そんな車は見つかるかな、ネットで出てくる中古車は、オーナーの好みに変えられているものが多かったです。それはそれでカッコがいいのですが、僕にはふつうがいいのでした。
三年間、探し続けて、そして、その車は仙台にありました。2017年12月のことです。
早速休みの日に見に行きました。
「1974年式 1200CC ワンオーナーカー アトラスホワイト」
塗装の艶はなくなり、ゴム類もかろうじて付いているような状態です。でもまつたく「普通」のかぶと虫がそこにいました。
「試しに運転していいですか?」
と、ドアを開けた途端、一瞬タイムスリップをしたかのようでした。
25年間記憶から完全に忘れていた「かぶと虫」、あの匂いがしてるのです。
匂いの記憶は、不思議でした。どんな匂いか表現不可能ですけど、匂いを嗅ぐと記憶が蘇ってくるようでした。
その匂いで完全にノックアウトされてしまいました。
運転してみるとパワーはありませんし、左方向指示器もでません。燃料計はゼロのまま。
でも、この車を逃したら、もう二度と出会えないと思いました。