実はベスパに乗りたかった
当時、まだビートルは持っていなかった。
妻と二人で出かけるには、二人乗りのバイクもいいかもしれない──そんなふうに思ったことがある。
それに、ずっと憧れていたベスパにも、一度は乗ってみたかった。

若くもない夫婦が、ベスパで二人乗りして走る。
ちょっと恥ずかしいけれど……
それでもいいから、乗ってみたかった。
でも、小型オートマ限定免許を取ることから始める必要があった。

取得から一年間は二人乗りができないということを知ったのは、教習所でのことだった。その話を聞いたときは、少し落胆した。
まあ、それは仕方がない。──もうひとつの問題は、憧れのベスパがけっこう高かったことだった。
結局、ベスパはあきらめた。
国産中古スクーターに
普通なら、2〜3件のバイク屋を回って、その中から決めるって感じかもしれない。
でも、そういうバイク屋は、たいてい郊外にある。
電車を乗り継いで、駅から歩いて……なんてやっていたら、それだけで一日が終わってしまう。
天気にも、気分にも左右されるし、そこまでして探そうという気には、どうしてもなれなかった。
正直なところ、ベスパ以外のスクーターは、どれも似たように見えたのだ。
だから僕は、比較的近くにある、そこそこ大きなバイク屋に足を運んだ。
125ccの中古スクーターが、4台ほど並んでいた。
その中から選んだのが──中古のスズキ・アドレス。
教習所で乗っていたのも、たしかアドレスだった気がする。
ブラックのボディが、なんとなく引き締まって見えたのも、理由のひとつかもしれない。
でも最終的には──やっぱり、値段だった。
一番安かったから、それにした。
バイクのことを知らないまま、買ってしまった
そのアドレスに乗ってしばらくしてから、いくつか気づいたことがある。
ライトスイッチのマークは、日焼けのせいか、ほとんどかすれて見えなくなっていた。
外装のカウルも、Amazonにあるような社外品に交換されているようだった。メーカーのステッカーは、どこにも貼られていなかった。
外装のカウルを変えた理由は、あえて深く考えないことにした。想像しても、あまり楽しい答えは出てこなさそうだったからだ。

しばらく乗っていると、燃料メーターが動かなくなった。
バイク屋に持っていくと、整備士さんはメーターを軽くコンコンと叩いた。
すると、針がゆっくりと上がっていく。
「アドレスには、よくあるんですよ。針が軸にくっついちゃうんです」

あっけないほどの原因と対処法に、ちょっと拍子抜けした。買ったばかりだっただけに、少し落胆もした。
その後もたびたび起きたが、叩けば直った。
当時の僕は、バイクのことをほとんど何も知らなかった。だから、仕方がない。
「今度買うときは、もう少しよく確認しよう」と思ったが、たぶんこれが最初で最後の一台になる気もしている。
スズキのアドレスも悪くない
それでも、ちゃんと走ったし、故障もなかった。
ビートルには内緒だが、アドレスはいつも機嫌よく走ってくれる。
交番の前に停められていた白いスクーターが、まさかの同じアドレスだったときは、ちょっと嬉しかった。
「自分の選択も、まんざらでもなかったな」と思った。
なんといっても、白バイ?と同じバイクなんだから。
近場は、もっぱらアドレスの出番だ。
もちろん、一年経って、妻と二人乗りもした。
でも「怖い」と言われてしまい、3〜4回乗ったきり、乗らなくなってしまった。
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