ビートルの再生が始まった
ビートルの再生が始まり、しばらくして、店から連絡がきた。
「パーツの手配が済みました。仙台の専門店とも話がついています。進捗はそのつどご報告します。」
いよいよ、あのビートルの再生が動き出した。
担当の方は、こまめにLINEで様子を知らせてくれた。
写真付きで、しかもリアルタイム。
今では当たり前のことかもしれないけれど、そのときはちょっとした驚きだった。
修理の工程が、まるでドキュメンタリーみたいにスマホに届く。
それがどこか、時代の流れを感じさせた。
写真には短いコメントが添えられていて、それがどれも丁寧で静かな語り口だった。
こちらの心拍数とは関係なく、淡々と進んでいく感じが、なんだかよかった。
分解写真
ビートルの再生が始まり、最初に届いたのは、フェンダーを外された写真だった。


フェンダーのないビートルは、どこか間が抜けていて、
あの丸くて愛嬌のある姿とはまるで別物だった。
次に届いたのは、ヘッドライトを取り外した写真。

「目玉」を失ったビートルの顔は、どこか所在なげで、不安そうにも見えた。
自分が手術台に乗せられたら、きっとこんな顔になるのかもしれない。そんなことを思った。
そして──
しばらくして届いた写真には、フェンダーも、ヘッドライトも戻っていた。

あとは、バンパーをつければ完成らしい。
ビートルの再生が終わりに近づいてきた。
あっけないような気もしたけれど、悪くない流れだった。
ビートルの再生完了
「作業が終わりました。納車前に一度、確認にいらしてください。」
そう言われて、僕は仙台へ向かう新幹線に乗った。
車窓から見える景色は、いつもより少しだけ静かに流れていた。
胸の奥で何かが、ゆっくりと高鳴っていた。
別の車になった
そして、いよいよ再会のとき。
そこには、見違えるほどピカピカになったビートルがいた。
まるで、新しい命を吹き込まれたみたいに。
艶のある塗装、新品のラバー、透明感を取り戻したウインカー。
かつてのくたびれた姿が思い出せないくらいだった。
どこか得意げな顔で、「ほら、どう?」と話しかけてくるように見えた。
ああ、ほんとに、戻ってきたんだなと思った。

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