折れたスプリング、突き刺さる座面
運転中、どうにもお尻に違和感があった。
まるで何かが、静かに、しかし確実に刺さっているみたいな感触だった。
帰宅して確認してみる。
座席の裏側、シートスプリングが折れていた。
しかも、折れた先がシートを突き破り、こちらに向かって顔を出していた。

それがお尻に刺さるのだ。そりゃ痛いはずだ。
結束バンドで応急処置をしてみたけれど、シートスプリングの力は強い。
しばらくすると、またぷすりと刺さってくる。
なんだか、気まぐれな針仕事みたいだ。
難航するシート部品探し
なんとかしないと。
フラット4にもシートスプリングはあるにはある。
だけど、びっくりするくらい高い。
思わず、苦笑いしてしまった。
中古、ないかな。
そんな甘い期待を胸に、ヤフオクを暫くの間、覗いていたけれど、影も形もない。
「ああ、やっぱりダメか……」
半分あきらめかけた、そのとき。
eBayで見つけた。
eBayで奇跡の出会い
しかも、シートスプリングだけじゃない。シート一式だ。
シートスプリングを組み込んで、パッドを貼って──そんな面倒な作業は不要。
まさに、探していた以上のシートだった。
リビルト品。
1973〜75年式用、右側。
条件は、完璧だった。

価格は100ドル。送料も同じく100ドル。
(このときのレートは、1ドル=109円だった。)
悩んだ末に、クリックした。
たぶん、これを逃したら、もう二度と出てこない。
そう思ったからだ。)
届いた、待望のリビルトシート
注文してから5日後、大きな箱が家に届いた。
持ち上げてみると、ずっしりとした重さ。
送料100ドルは、むしろ安かったかもしれない。
さっそく開けてみる。
スプリングは黒く塗装され、クッションはスポンジに新しく張り替えられている。

中には、小さなメモが一枚、同封されていた。
「このシートには40個のスプリングコイルを使っています。
オリジナルは8個だけで、座り心地も耐久性もいまいちです。」
そんなふうに書かれていた。
なるほど、と思う。
だけど、だからといって魔法みたいに良くなるわけじゃないだろうな、とも思う。
取り付ける前に、家でそっと座ってみた。
うん、悪くない。
──とはいえ、取り付けてもいない段階で、断言はできないけれど。

取り付けが終わって、さっそく走り出してみた。
取り付けて発覚、ちょっとした問題
信号待ちで先頭に止まったとき、ちょっとした問題に気がついた。 ──信号が、見えない。
どうやら、新しいシートは座面が少し高くなっているらしい。 そのせいで、フロントガラスの上端に信号が隠れてしまう。 体を少しかがめないと、信号が変わっても気づかない。
だから、信号待ちは軽く前傾姿勢で対応することにした。 なんだか、ちょっと間抜けだけど、まあいい。
それでも、大満足
結果的にリビルトシートには満足している。
いまのビートルの小さな問題を、一つひとつ直していく過程もまた、面白い。
今回の売り手──eBayのこのショップ──

彼らのほかの出品を見ているだけで、なんだか楽しい気分になった。
ビートルって、やっぱりいいな、と思った。
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