3.ビートル、僕のもとへ──納車の日に思ったこと

空冷ビートル

LINEに届いた一通のメッセージ

2018年2月23日の夜、LINEにメッセージが届いた。
「これから東京に向かいます」

いよいよ、ビートルがやってくる

ビートルが、ついにやってくる。

3年も探し続けて、仙台でようやく見つけた車だった。

何度も写真を見返し、頭の中で何度も走らせた。
でも、それが今、実際に僕のところへやってくるという。
まだ夢の中にいるような、本当のことと感じるのに時間がかかった。

到着──トラックの荷台から降りてきた白い顔

午後、ビートルを積んだトラックが到着した。
運転席から作業員の男性が降り、ゆっくりと傾くスロープを、ビートルが後ろ向きに降りてくる。
白くて、静かで、どこか懐かしい顔をしていた。

ついに来たんだな。そしてふと浮かんだ父のこと

ナンバーは「8666」、「ハロー」と、なんだか車に挨拶されているような、不思議な気持ちになった。

その瞬間、胸のあたりに、ふっと何かが浮かんだ。

用意していた駐車場にとめ、初めて写真を撮る。


うまく言葉にできないけれど、「ああ、来たんだな」とだけ思った。

そして、ふと思い出した。今日は、父の命日だった。

偶然にしては、少しできすぎている。
でも、世の中には説明のつかない出来事が、案外たくさんある。
もしかしたらこれは、そんな小さな奇跡のひとつだったのかもしれない。

マンションの駐車場で、そっとエンジンをかけた

あの低く、ゆっくりとした音が響く。
まるで、遠い昔に聞いた子守唄みたいな音だった。

走り出さずにはいられなかった夜

エンジン音を聞いたら、走り出さずにはいられなかった。

この町内を、一周してこよう。

そんなふうに思った。

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