僕のビートルの前オーナーは、きっと几帳面な人
なにせ──12ヶ月点検、車検、
1974年から2014年まで、40年間の整備記録簿が一つも欠けずに残っている。
オイル交換、プラグ交換はもちろんのこと、ピストンリングの交換なんていう、大ごとな修理の記録までちゃんとある。
まるで「履歴書」みたいな整備記録だ。
整備記録簿は修理以外のことも見えてくる。
購入してから毎年、きまって7-8000キロを走り、12ヶ月点検と車検は、一度も欠かさずにきちんと毎年11月に受けている。

でも──
ある年から、車検の記録が7月にずれていた。
それが、このビートルに残された最後の車検だった。
なんだか、人生の節目を垣間見るようで、少し切ない。
整備記録に書かれているのは、ただの部品名や数字だけれど、
その裏には、この車と過ごした40年という時間が、たしかに刻まれている。
そして、このビートルが僕のもとへやってくる。
記録はそこで途切れてしまった。
いざ自分がオーナーになってみると、最初の車検は買った中古車センターが行った。
点検簿はなかった。
今お願いしてる、空冷ビートル専門店でも点検簿はない。
どうやら、ああいった整備記録簿は、認定工場で整備を受けたときにしか発行されないらしい。
僕がお願いしている小さな修理工場では、それが出せないのかもしれない。
自分の整備記録ノート
社長ひとりでやっている工場で、整備記録簿が出てくるような、そういう“きっちり感”はない。
でも、腕は確かだし、信頼している。
だから、その代わりに──記録の続きを、自分で詳しくメモしている。

車検や12ヶ月点検で何をしてもらったか。
それ以外でも、オイル交換、タイヤ交換、バッテリー交換など、
なにか作業をしたときには、手帳に書き込んでいる。
記録は、自分のためでもあるし、いつかこの車を誰かに譲ることがあれば、その人のためにもなる。
もともと僕は、几帳面な性格ではない。
どちらかというと、わりとズボラなほうだ。
それでも、この車のこととなると、なぜかちゃんと書き残しておきたくなる。
──この空冷ビートルには、そんな力があるのかもしれない。

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