2.あの匂いのあとで──ビートルを迎える決意

運転席 空冷ビートル
スチールダッシュ、シンプルな内装

2017年の暮れ、仙台で見つけた一台のビートル。その続きの話を、もう少しだけ。

これは、ビートルを仙台で見つけたときの投稿

心は決まっていた

あの匂いにノックアウトされてからというもの、僕の心はほとんど決まっていた。
白く、スチールのダッシュボード、フェンダーの上のウインカー。車高もノーマルのまま。

それは、3年間探し続けた僕の理想そのものだった。

落ち着け

でも、決して安い買い物ではなかったし、僕はこれまで何度も衝動買いをして後で後悔したことがある。だから自分にこう言い聞かせた。
「落ち着いて、一呼吸」

中古車店の担当者に、僕は正直に言った。
「買うつもりなんです。でも、妻に相談しなくちゃいけないんです。2、3日で連絡しますから、キープしておいてもらえますか?」

不安だった新幹線の帰り道

新幹線の車窓から、東北の冬景色が静かに流れていく。

返事を待っているあいだに、誰かに買われてしまうんじゃないか。
本当に、あのビートルが僕の手に入るのだろうか。

そんな不安が、じわじわと胸に広がっていた。

東京に着いてからも同じだった。
家に帰っても、どこか落ち着かない。
本当に、あのビートルは僕のものになるのか。そう思うたびに、胸がざわついた。

妻のことばで、決意が固まった

妻には、事前に軽く話してあった。
だから、「けっこう程度良かったんだ。いいよね?」って聞いたら、返ってきたのは期待通り。
「いいんじゃない?」

次の日、僕はすぐに電話をかけた。
「買います。来週また伺います」

再び仙台へ

1週間後、また仙台にいた。

朽ち果てたゴム類、錆が浮いているフェンダー、破れたスピーカー、色の褪せたウインカー、ほかにもいろいろ、交換に必要なパーツの相談をして、内金を支払った。

修理にかかる費用は、のちほど見積もりを出してもらうことになった。

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